ハチロクがデビューから2年後にマイナーチェンジ
誕生以来2年、86が初のマイナーチェンジを実施した。
外観では、ルーフのアンテナがシャークフィン型になったくらいで、普通のマイチェンでメインになるグリルやテールレンズあたりはいっさい変更がなかった。
インテリアのほうはインパネにカーボン調加飾が採用された程度である。 この他、機能面では「ダンパー特性を見直して走行性能を向上」とアナウンスされているが、これにしても、ファインチューンのレベルといえる。ほかにはフロントサスメンバーとリアサスアームに使用されているボルトの形状変更など、実にマイナーな部分しか変えていない。
なんか、拍子抜けするくらい「従来どおり」である。
「ちょっと物足りないのでは?」と、CEの多田さんにぶつけてみたのだが、返ってきた答えは「初期モデルに乗ってる人がガッカリするようなマイチェンはやりたくなかったんです」というものだった。
いわく、「ボディ剛性アップもスポット増しでやれば効果があるけど、それじゃ従来モデルに乗ってる人はアップデートできない。
だから、サスペンションボルトのフランジ部分を広めて締結剛性をアップするとか、いろいろとエ夫してるんです」。
そう、多田さんはすでに86を愛用している既納ユーザーのことを、すごく気にかけているわけだ。
マイチェン車を試乗して
そういう意味では、今回のマイチェンからオプションで選べるようになったザックスのダンパーキットも注目。8万円弱のバーゲン価格で評価の高いザックスの走りが試せるというのは、従来型ユーザーにとっても嬉しいことである。
で、そういうきわめてデリケートなマイナーチェンジを実施した新型86を富士のショートコースで試してみたわけですが、走りのテイストが大きく変わったというより、むしろしなやかさや上質感がレベルアップしているというのが率直な感想であった。
変更点が微妙だけに、新型、従来型ともにMT/ATが用意されていて取っ換え引っ換え乗り比べが可能だったのだが、明らかに差が出るのはクイックに左右に切り返すS字コーナー。
さしあたって、最終コーナーひとつ手前の左ターンだ。 従来モデルでここを攻めると、左から右にイッキに荷重移動した時のブレークが大きめ。
86だからテールが流れるが流れるのはべつに問題ないのだが、スライド量が大きくなってカウンターステアで対処しきれず、少しスロットルを戻すようなコントロールが必要になってくる。
新型ではこの点がかなり楽に。同じようなスピード/車両姿勢でアプローチしても、カウンターだけでちょうどアウト側縁石でスライドが終息。
こういった部分はかなりデリケートな違いだから、走る場所やドライビングスタイルで印象が変わってくる可能性はあり得る。トヨタ広報のHさんにいわせると「新車の試乗会で比較用に従来モデルを持ち込むのは、当社では異例のことです」というくらいで、ダイレクトに乗り比べないとそれらの進化はなかなか分かりにくい。
でも、ドライピンクの差が出にくいAT仕様の比較では、かなり再現性高くハンドリングテイストの進化を感じられたのは収穫であった。 積極的にドリフトを楽しめるという86の走りの方向性には全然ブレはないけれど、その滑りの過渡特性がよりスムーズに、より奥深くなったということは間違いいなくいえると思う。
剛性アップで走りぬくヴィッツRSのG’s!
G’sはトヨタのスポーツコンバージョンモデルとしてお馴染みで、ヴィッツRSにも’11年から年からG’s仕様が用意されていた。
そのヴィッツRSのG’s仕様が、本体のマイナーチェンジにあわせて進化。こういうコンバージョンモデルをマイチェンするのは珍しいことだけど、最近のトヨタは走りに関してかなりヤル気。
それを象徴するモデルではないだろうか。
内外装のモデファイはもちろん G’s仕様の売りのひとつだが、今度のヴィッツRS、 G’s で注目すべきは、モノコックのスポット増しやシャシーブレースの追加など、基本骨格の強化をかなり念入りにやっている点。もちろん、バネ/ショックは独自のスポーツ仕様が装着されるわけだが、その足を活かすにはボディが重要という判断になる。
走りは従来型のヴィッツRS G’sより格段の進歩といっていい。今までのモデル「ヴィッツRS G’s」は、サスをいじったことでスポーツ度はアップしているものの、走りのスイートスポットが狹くなっていたのがマイナス面。
さしあたって、乗り心地なんかひどいもものだった。
これに対して、新型は骨格がはるかに強固になったことで足まわりにしなやかさが生まれ、サーキットのみならず日常域での走りに上質感が生まれている。
価格はノーマルより22万弱のアップではあるけれど、価格差以上の入念なチユーンが施されているといっていいと思う。